ICJLE日本研究講演シリーズ

2014年6月24日更新更新

(講演は全て日本語で行われますが英語のパワーポイントがつきます。)

日本語教育講演シリーズはウーロンゴン大学のチームが企画しました。

ICJLE日本研究講演シリーズ 1
沖縄のアイデンティティーの再考察

11日(金)11:00-12:00

ヒュー・クラーク名誉教授、シドニー大学

ヒュー•クラーク、シドニー大学名誉教授は長年シドニー大学の主任教授として日本語、日本文学を教えてこられた。オーストラリアの日本語の先生方の中にはクラーク先生に日本語を習ったという方が少なくない。クラーク先生は、シドニー大学に赴任される前はロンドン大学のSOAS、東洋アフリカ研究学院に所属され、ご研究の分野は、日本語の方言、沖縄研究、および日本語教授法である。八重山諸島でフィールドワークをされた他、日本滞在歴も長く、早稲田、法政、千葉大学で教鞭をとられたこともある。

 

要旨

アイデンティティと言えば二通りのものがある。即ち、自己のアイデンティ ティと、他者が貼り付けるアイデンティティーである。主として、前者は架空 の理想像であり、後者は消極的なイメージである。この発表では、いくつか の沖縄像を追究したい。

日本にとっては、沖縄の存在とは何か。沖縄にとって、日本への編入はどう いう意味を持つのか。沖縄人像の変遷を歴史的な視野から考える。新井白石 から、伊波普猷、柳田国男、折口信夫、柳宗悦、島尾敏雄、大江健三郎、佐 藤優まで、多くの知識人が沖縄に関心を持ち、南西諸島の視点から日本文化 を論じて来た。一方、琉球の王朝時代から現在に至る迄、琉球列島の人びと が自分たちの東洋に於ける位置を探し、自分たちの主体性の形成に努めてき た。

南西諸島の重要性は特に日本史の転換期や、危機に瀕した時に浮き彫りにさ れる。1609年の薩摩の琉球侵略、ペリー提督の黒船の渡来、日清戦争、太平 洋戦争の沖縄戦などがその例である。今も尚、米軍基地の問題と尖閣諸島を 巡る領有権の問題で沖縄が脚光を浴びている。先行研究を踏まえ、私自身の 経験を付け加えて、浅く広く沖縄人像の姿の過去と現在を紹介した上で、あ るべき将来のアイデンティティを示唆する。

 


ICJLE日本研究講演シリーズ 2
歌人前川佐美雄とまほろば大和

11日(金)15:00-16:00

リース•モートン名誉教授、東京工業大学 

リース•モートン教授は2003年から2014年まで英語と比較文化学を東京工業大学で教えられ、2014年4月に同学の名誉教授になられた。1992年から2003年まではニューカッスル大学の日本語の主任教授をされ、それ以前はシドニー大学で教えていらっしゃった。モートン先生の主な研究分野は日本文学、文化、美学で、ご著書は、日本の詩歌に関するものや、翻訳書、また、「与謝野晶子の『乱れ髪』を英語で味わう」など、数多く出版されていらっしゃる。英語のご著書に関しては、ホームページの英語版をご覧いただきたい。

要旨

前川佐美雄(1903−1990年)は、モダニズム短歌の大家として20世紀の日本で活躍した最も代表的な歌人の一人である。佐美雄にとって「旅」とは、西洋の美術、モダニズムへの道のりを意味する。1930年、佐美雄は自分に影響を与えた芸術家は、マティス、ピカソ、キリコ、シャガール、ランボー、プルースト、モネ、コクトー、バレリー、ル・コルビュジエ、マネ、チャップリンであると述べている。

個人的には、佐美雄の処女歌集『植物祭』(1930 年)は、純朴な桃源郷、奈良で育った影響を明らかにしていると感じる。そこで、私の講演もまず、奈良という土地の起伏や伝統が佐美雄にとってどのような意義をもっていたかを見ることから始めたい。

さらに、大和について佐美雄が書いた作品、『大和六百歌』(1971 年)を詳しく分析して、奈良という土地が彼の歌に持つ意義をたどってみる。『大和六百歌』の後書きには、「題して「大和六百歌」、奈良・大和の歌ばかりである。私がこれまで詠んだ歌の一割ぐらい、千首ほどの中から選んだ」と書かれている。

佐美雄が最後に奈良について書いたのは『大和まほろばの記』(1982年)で、これは旅日記でもあり、歌の記録帳、地域の地理・歴史・文化・文学・記念碑などの記録でもある。ここに収録された奈良についての歌を追っていくと、風景という概念そのものに対する佐美雄の理解と、この素朴な土地が惹き付けてやまない魅力の変遷が見てとれる。


ICJLE日本研究講演シリーズ 3
Henry Black – On Stage in Meiji Japan

12日(土)13:00-14:00

イアン•マッカーサー博士 名誉準会員 シドニー大学

イアン•マッカーサー博士は、ジャーナリストであり、また、明治の落語家、ヘンリー•ブラックに関する新刊の著者でもある。マッカーサー先生は、シドニーの各大学で日本語、日本研究を教えられた経験があり、現在シドニー大学の日本研究学科の名誉準会員である。

要旨

オーストラリア生まれのヘンリー•ブラック(1858−1923)は、1880年代、1890年代に日本で落語家、役者として身を立てていた。この講演ではイアン•マッカーサーのブラックの生涯の物語との出会い、そして、ブラックの明治維新での役割について解説する。ブラックはチャールズ•ディケンズとメリー•ブラッドンのヨーロッパのミステリー小説を落語に脚色することで、19世紀ヨーロッパのモダニティーの概念を日本に紹介した。ブラックは民主主義を目指す自由民権運動にも参加した。


座談会
‘Global Education in the Asian Century’?

12日(土)11:00-12:00

ケント・アンダーソン教授、ヴェラ・マッキー教授、カオリ・オカノ教授、岡野かおり教授は 

ロウィーナ•ワード博士は、ウーロンゴン大学の人文科学学科に所属し、日本語担当のレクチャラーで、その研究分野は、1940、50年代のソビエト連邦における日本人女性囚、太平洋戦争期間中オーストラリアで強制収容された日本人一般市民、現代日本の構築における言語の役割である。また、2013年、国際交流基金の助成金を得て、日本語を学習した大学卒業生がどのような職に就いているか調査されている。 

 

 

 

 

ケント•アンダーソン氏は、今、オーストラリアで一番熱い、日本語教育の擁護者で、代弁者である。アデレード大学の副学長という重職につきながら、日本語教育、さらにはオーストラリアの外国語教育の推進に力を尽くす、豪州日本研究学会の元会長であり、豪州日本研究界のリーダーだ。 アンダーソン氏の専門は法律、経済、アジア研究などで、前任のオーストラリア国立大学では国際法、日本の裁判員制度などの授業を受け持ってきたが、過去、ハワイで弁護士として実務をしていたこともあり、又、北海道大学や、早稲田大学を始め、日本の大学で法律の教鞭をとっていたこともある、多様な経験の持ち主だ。豪日関係、日本の法律などの専門家として、マスメディアでも活躍している。 アンダーソン氏が、他学の副学長から際立つ点は、日本語教育を現場の視点で理解している点だ。自らが学生時代に日本語を学習し、高い日本語能力を持つだけでなく、オーストラリア国立大学勤務中は、日本で日本語で行われる「大学対抗模擬裁判交渉コンペティション」にオーストラリアの法学部の学生達から成るチーム•オーストラリアを伴い参戦、東京大学、京都大学などの強豪を相手に、チームを二度も優勝に導くという快挙を達成している。このような法律と日本語の教育を結んだ実践に対し、当時の首相から賞賛を受けた実績もある。

 

ヴェラ•マッキー教授は、ウーロンゴン大学のアジア研究上級教授で、アジア太平洋地域における人権問題について研究されている。マッキー先生の主なご著書には、フェミニズム、ジェンダー関係のものが数多く、日本語でも『グローバル化とジェンダー表象』(お茶の水書房)を書かれている。英語のご著書に関しては、ホームページの英語版をご覧いただきたい。

 

 

 

 

岡野かおり教授は、メルボルにあるラトローブ大学の言語、歴史、文化学科の学科長で、アジア研究と日本語を教える傍ら、日本とアジアの教育や多文化主義を社会学的見地から研究されている。大学で職に就く以前はオーストラリア、ニュージーランドの高校で教員をしていらした。日本のマイノリティーや教育に関するご著書が数多い。英語のご著書に関しては、ホームページの英語版をご覧いただきたい。

 

 

 

 

 

要旨

この座談会では「アジアの世紀」と呼ばれる今世紀にますますグローバル化する国際 市場における教育がどのように変化するかに関して、参加者がそれぞれのが意見を 交換する。日本とオーストラリアの言語教育の進展や、留学生の流動性、その他の課 題について議論する。議論では、教育制度の全体に関わる課題を取り上げ、また、 近い将来、日本語教育にどのような可能性があるかも検討する。

 

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