基調講演

2014年4月1日更新更新

ICJLE-全豪シンポジウムでは、三つの基調講演が行われます。

全豪シンポジウム 基調講演
日本を創造することはまだ必要か―教員、留学などに関し

10日(木)9:00-10:00
大講堂

ケント•アンダーソン教授、アデレード大学副学長(国際関係担当)

ケント•アンダーソン氏は、今、オーストラリアで一番熱い、日本語教育の擁護者で、代弁者である。アデレード大学の副学長という重職につきながら、日本語教育、さらにはオーストラリアの外国語教育の推進に力を尽くす、豪州日本研究学会の元会長であり、豪州日本研究界のリーダーだ。

アンダーソン氏の専門は法律、経済、アジア研究などで、前任のオーストラリア国立大学では国際法、日本の裁判員制度などの授業を受け持ってきたが、過去、ハワイで弁護士として実務をしていたこともあり、又、北海道大学や、早稲田大学を始め、日本の大学で法律の教鞭をとっていたこともある、多様な経験の持ち主だ。豪日関係、日本の法律などの専門家として、マスメディアでも活躍している。

アンダーソン氏が、他学の副学長から際立つ点は、日本語教育を現場の視点で理解している点だ。自らが学生時代に日本語を学習し、高い日本語能力を持つだけでなく、オーストラリア国立大学勤務中は、日本で日本語で行われる「大学対抗模擬裁判交渉コンペティション」にオーストラリアの法学部の学生達から成るチーム•オーストラリアを伴い参戦、東京大学、京都大学などの強豪を相手に、チームを二度も優勝に導くという快挙を達成している。このような法律と日本語の教育を結んだ実践に対し、当時の首相から賞賛を受けた実績もある。

講演要旨

中国の台頭と日豪関係の成熟に伴い、過去10年間、特に一般社会において、日本はまだ重要な国かという問いかけがなされてきた。双方の関係は安定してきたものの、長年連れ添った退屈な結婚関係のようだと繰り返したとえられたものだ。今回の講演では、なぜ日本がまだ重要な国なのか、もしくは新たな現状の受け入れを促進するといった視点から、どう肯定的に日本に重要性をもたせ、オーストラリア社会にとって刺激的なものとするかという視点を映したい。今は、日本の地位を守るというより日本をPRする方向へ変換する時期である。この新たなアプローチの焦点は若者たちにあてられる。つまり、大手企業や政府、一般社会のリーダーではなく学生たちが主役だ。若者たちが日本に関心を持つよう教育を支援し、新コロンボ計画 (New Colombo Plan) などの制度を通して日本への留学生の数を増やし、日本を新しい世代にとって興味深く魅力のある国にしていくことを改めて重視することが不可欠である。

*全豪シンポジウムの基調講演は、オーストラリアの日本語教育者に焦点を当ててものですが、ICJLEの参加者も聞くことができます。

(アンダーソン氏の基調講演に予定されていた日本語のパワーポイントは、残念ながらつかないこととなりました。申し訳ございません。)

ICJLE-全豪シンポジウム共同 基調講演
Language Learning Beyond the Classroom『教室を超えた言語学習』

11日(金)9:00-10:00
大講堂

デイビッド•ヌーナン教授、ニューサウスウェールズ大学名誉教授

デイビッド•ヌーナン氏といえば、外国語教育に携わる者なら、一度はその著書に触れたことがあるのではないか。特に外国語としての英語教育の分野で、数々の専門書および教科書を執筆し、ケンブリッジ大学出版、オックスフォード大学出版などから世に出している。『学習者中心のカリキュラム』(1988)や、『タスクベースの外国語授業』(2004)などが代表的だ。2000年には世界最大の言語教育学会であるTESOLの会長を務めたが、北米以外から選出された初の会長となった。ヌーナン氏は、オーストラリアが世界に誇る教育者で、2003年にはオーストラリアで7番目に最も影響力のあるオーストラリア人に選ばれているほか、アメリカ政府からも、英語教育のパイオニアとして賞を得ている

ヌーナン氏の著書は、常に教室内の教師の立場を理解したものである。専門書においても、教室の中の学習者の声、教室におけるコミュニケーション、教室における第二言語研究と、教室をテーマとして外国語教育の改新に従事してきた。また、ヌーナン氏は、現場の教師にアクション•リサーチを推進してきた。教育の現場と研究が一体となってこそ外国語教育の分野の進展があり、外国語教師の専門性の確立があるということであろう。

本大会では、教室を一歩出て、Language learning beyond the classroom『教室を超えた言語学習』をテーマに基調講演を行ってくれる。(講演は英語ですが、日本語のパワーポイントがつきます。)

講演要旨

本大会のテーマ「つながりとコミュニティー」は、教室を超えた言語学習と言語使用という最近私が夢中になっているテーマと重なっている。言語学習に長じた学習者達は、よく教室の外の言語学習の機会が自分の成功の鍵となったと言う(Nunan and Richards, 2014)。体験学習の理論も、教室内の学習とそれを教室外で個別に応用する、その組み合わせが最も効率的だと説いている。第二言語学習の成功の試金石は、学習者が実際に教室外でコミュニケーションできるかどうかであると言える。

比較的最近までは、教室で習ったことを教室外の世界で実用できる機会は限られていた。しかし、技術の進歩、特にインターネットの普及がその状況を一新し、学習者達は驚くべき種類の本物の音声や文書のテキストにアクセスすることができるようになった。ソーシャル・ネットワーキング・サイトの激増で、学習者達は、世界中に散在する対象言語のユーザー達と言葉と文書で通信する機会を得た。

本発表では、教室の外で、本物の、しかも、教育学上体系化された状況下で言語を使用することを通しての学習が、言語学習過程をかなり強化することができると、私は主張する。その実践例を事例研究の形で提示し、教室の外の言語学習と使用のために存在する豊かな機会を例示したい。

参考文献: Nunan, D. and J. Richards (eds.) 2014. Language Learning Beyond the Classroom.
New York: Routledge.

ICJLE 基調講演

Japanese Language Education for the Global Citizen: Engagement in Communities and the Society『社会・コミュニティ参加をめざす日本語教育』

12日(土)9:00-10:00
大講堂

佐藤慎司博士 プリンストン大学 日本語プログラム•ディレクター

佐藤慎司氏は、アメリカの、いや世界の日本語教育界の若手ホープである。佐藤氏は2011年、アメリカの私学の雄、プリンストン大学で長年活躍した牧野成一教授の後継者として、日本語プログラムのディレクターに就任した。このような要職に就いていることもさながら、佐藤氏の真骨頂は日本語教育の枠組みを超えた大きな視野にある。

この大きな視野のルーツは佐藤氏の博士論文が、文化人類学と教育学にまたがるものであることに見いだせる。佐藤氏の編著書『アセスメントと日本語教育:新しい評価の理論と実践』では、教師と学習者がともに評価しあい、教室内だけなく社会とも積極的に関わっていく「アセスメント」という考え方を提示した。『社会参加を目指す日本語教育』では、日本語教育を学習者が世界市民となるその過程に位置づけ、日本語教育を、そして日本語使用を通して学習者が社会参加をして行くイメージを描いた。つまり、日本語教育そのものが目指すべき「世界観」を提供した。

本大会で、これからの日本語教育を牽引するビジョンとパワーが期待される佐藤氏は、『社会•コミュニティ参加をめざす日本語教育』というテーマで講演してくれる。(佐藤氏の講演は日本語ですが、英語のパワーポイントがつきます。)

講演要旨

グローバリゼーションや科学技術の発展により、世界はめまぐるしい勢いで変化しており、以前にも増して様々なバックグラウンドを持つ人たちとコミュニケーションをする機会が増えてきた。このような状況を考えると、言語のクラスで、学習者は言語や文化の知識を学ぶだけでなく、目標達成のために自分のバックグラウンドを活かしながら様々なバックグラウンドを持つ人たちと柔軟に関わり、交渉しあっていくことを体験することも必要であると考える。このような理念のもと、講演者の提唱する社会・コミュニティ参加をめざす日本語教育とは「学習者が自分の属している(属したい)コミュニティのルール(言語・文化の知識や規範など)を学び、それらを単に通例として受け入れるのではなく、批判的に考察し、説得したりされながらいいと思うものは受け継ぎ、そうでないものは変えて行くための努力をし、コミュニティのメンバーとしての責任を担うことをめざす」日本語教育である(佐藤・熊谷2011)。本講演では、この理念の紹介を簡単に行った後、その理念に基づいて実施されたプロジェクトを一つ紹介する。

「見つめ直そう自分の将来と日本語」プロジェクトは、2013年秋学期に米国東海岸にある私立大学の日本語4年生の学習者を対象に実践された活動である。この活動で、学習者は自分の将来と日本語学習の関係を考え、日本語・将来・活動の3つの目標を設定、その後、身近なコミュニティと関わりながら目標達成に向けて活動を行った。本講演の後半では、学習者の中間報告、教師との個人面談、最終報告会の様子、最終レポート、プロジェクト後の感想とインタビューなどのデータを分析することにより、学習者とコミュニティとの関わりがお互いに与えた影響について考察する。

教師がカリキュラム、クラス活動を設計する際には、言語教育の動向、地域や学校、学習者のニーズは無視できないものである。しかし、それ以上に大切なのは、教師がどんな教育理念を持って実践を行っていくか、その中で学習者をどう評価していくかということを考えることである。なぜなら、教師が行っている実践は社会・コミュニティに大きな影響を与えているからであり、自分たちの日本語教育実践を通し、社会・コミュニティに影響を与え、変えていくこともできるからである。本講演では上記のような講演者の日本語教育に対するビジョンを様々な例を交えながら、わかりやすく解説したい。

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